こんにちは、甲府宝飾広報の浅利です。
5月20日からブランドデザイナー4名が本ブログにそれぞれ投稿を始めました。
まだまだ不慣れな投稿ではありますが、各デザイナーの個性が少しづつ出てきているのではないでしょうか。少しでもお楽しみいただけていたら私自身嬉しく思います。
今後も精力的に各デザイナーの想いや商品の魅力を存分に語ってもらおうと思っていますので、
4名のデザイナーブログをお楽しみいただけますと幸いです。
さて、今後も投稿が続く中、宝飾加工における専門用語も多くなってくる可能性があります。
そのため、私の方から少しずつ専門用語の解説をしていきたいと思います。
今回は【キャスト】について
キャストって、聞いたことがあるような無いような・・・という感じかもしれませんが、
よくテレビコマーシャルなどで
「〇〇分の1スケール!迫力のダイキャストボディ!」的なセリフを耳にしたことありませんか?
毎月購読して組み立てる例のモノです。
厳密に言うと宝飾のキャストと若干の違いはあるのですが、おおよその考え方や仕組みは似ている技法です。
宝飾業界では石膏などで型取った空洞に溶解した金属を流し込み、一度に纏めて任意の形状を作り出す事なのですが、まあ平たく言うと鋳造です。
一言に鋳造と言っても、ただ単純に溶解した金属を流し込むのではなく
そこには職人としてのこだわりや経験からくるカンが重要になってくるのです。
例えば金属にどれだけの温度をかけて溶かし込むのか
18金の場合、融点は約900℃となりますが、温度が上がり過ぎると地金自体が変質しパサパサな地金となりますし、低いと地金が型の通りに流れ切らずに形状不良を起こしてしまい、商品の仕上がりに大きな悪影響を及ぼします。
極端な事を云うと、数十度違うだけでキャスト品の仕上がりレベルが変わります。
また、気温や気圧、湿度の変化により大きく影響を受けてしまうのがキャストの難しさでもあります。
長年かけて培った金属の溶ける際のわずかな変化を見逃さない目
微妙な環境の変化に対しての、数値に現れないような微妙な調整を可能にする経験値
そのすべてを判断するのが”職人のカン”になります。
キャスト品=量産品というイメージが付きがちで、工業製品のように機械的に出来ていると思われる方も多いと思いますが、
機械頼りのキャストの中にも熟練の職人技が込められているのです。
キャスト技法が登場以前の宝飾職人は、地金を溶かし材料から手作りしていたためとても高価だったのですが、このキャスト技法が登場して以降、低価格ながら高品質の維持が可能になったのです。
宝飾の世界に手作り品の上質さとキャスト品の手軽さという2つの流れが出来上がりました。
その事が、後に宝飾職人に暗い影を落とすことになるとは、まだ誰も気が付いていない時代でした。
本日はここまでとさせていただきます。