製造

職人の仕事

職人の仕事

私たちのアトリエがある山梨県甲府市はジュエリー産業が盛んな街です。
古くから宝飾にまつわる歴史があったことから根付いた加工技術と発展を遂げてきた産業です。
そして、宝飾職人もこの街には数多く存在しています。
経歴の長い熟練の名工と呼ばれた職人から、日々技術を磨き前進している若手職人まで。

ジュエリーを製作するなかで、工具や技法など非常に多くの種類があります。
時間をかけてひとつひとつ丁寧な手仕事でつくられているジュエリー。
自社のアトリエではジュエリーが出来上がるまでに100以上もの工程を経て、製作を行っています。
非常に多くの作業がありますが、今回は最も重要で手のかかる4つの仕事について少しお話をさせて頂きます。

研磨作業時のリスク

ジュエリーの地金である貴金属を研磨していると、「鬆(す)」と呼ばれる穴が出てくることがあります。
これは、地金を鋳型を用いて形成するキャスト(鋳造)と呼ばれる製造技法を行う際に、熱の収縮や空気の巻き込みによって発生するものです。
研磨作業の際に、その「鬆」を職人は磨いたり、叩いてつぶしたり、また「ロウ材」と呼ばれる割金材で埋めたりしています。
しかし、鬆があまりにも多いと磨けなくなるどころか、全体の形状を崩してしまう事となり作業は難航してしまうんです。
あらゆる手段を使い職人は日々創意工夫をして製作しているんですね。

しかし、最終仕上げの目前まで研磨をしていて「鬆」が出てきてしまうと、また一から磨き直すことになってしまうんです。
時間をかけて丁寧に磨いてきてもまた同じ位、もしくはそれ以上に時間を要することになってしまいます。
繊細なデザインほどジュエリーの形状は重要です。
美しいフォルムを維持するためにも高い技術が必要で、「鬆」のようなリスクがあることで
研磨作業にも相当な手間がかかっていることがよく分かりますね。

留めで重要な爪先

ジュエリーに、セッティングされている宝石は職人の手によってひとつひとつ丁寧に留められています。
留める際には割れたり欠けたりしないようにしっかりと支えます。
そして、宝石が動かない様にしっかりと爪を抑えて留めていきます。
これもまた、職人の高い技術が必要となる作業です。
更に、何と言っても重要な留め作業の最終仕上げは「爪の形成」です。
留めている爪の丸さ、大きさ、長さに拘り手をかけて仕上げていきます。
全ての爪を同じ大きさや形状に整えていく非常に大変な作業なんです。
なので引っかかりがなく、綺麗に丸く形成されたつめはジュエリーを見たときに宝石を引き立たせる重要な役目をしていることがよく分かります。

細部にまで拘った研磨

ジュエリーそのものの品質基準として磨きの具合も判断の一つに入ります。
しっかり磨きが行き届いていて、地金のひかり具合も検品されます。
指輪の内側部分や、ペンダントなどの裏側のあまり見られない部分、また細く狭い箇所など磨きづらい部分もしっかりと磨かれているかが重要なポイントです。
品質の高い、高級なジュエリーほど細部に渡り隅々まで綺麗に仕上げられているものです。
どこまで手をかけるかは職人のこだわりもありますが、鏡面の多いデザインであるほど手間はかかります。
完成されたジュエリーの細かな部分を見て綺麗に磨かれていると、その手間と繊細な職人の仕事を知ることが出来ます。

原型職人

原型とは、同じジュエリーを再度製作する際に必要となる元の型です。
その原型の仕上がり具合で、キャストされた後の製作工程に大きく影響します。
作業の効率にも非常に関係していいるので、重要なものなんですね。
もしも、傷や変形があったままの原型を使用した場合、その後の再製作や量産の際に毎回全てその傷や変形を修復していく必要があります。
一方で、緻密に綺麗につくられた原型なら修復の手をかける必要もないんですね。
更に、元の型となる原型は、主にシルバーを使用してつくられますが地金を自在に加工して形成していくため、最も高い加工技術が必要な工程です。